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高校の教育内容についてもう少し思うところを書くと

「現在の高校教育は○○が問題であり、それが研究を滞らせている(から高校の教育内容を変更すべきだ)」という事を研究者側が言うのは若干ナンセンスだと思うのです。当たり前ですが、高校教育の目的は研究者を育てる事ではないのですから。

もちろん、高校教育にゲノムの内容が少ないのは事実で、またそれは今後来るパーソナルゲノム時代において必要な社会的知識として不足する部分があると考えられるため、高校レベルでゲノム部分の教育を強化する事は必要だと思います。一方、内容を増やすのであれば「減らす」部分も必要になるのですが、何を減らすかについてはコンセンサスの取り様がないように思われます。(メンデル遺伝を高校内容から中学内容に移行させただけでも私は大英断だと思いますが、論調を見るに誰もが納得しているわけではないようです。)

結局、声の大きい先生(指導要領を編纂する際に委員会に入っていた先生?)が研究している内容が重要と位置づけられているのではないかとすら思います。例えば、生態系・環境の分野は1→2→1といつ教えるかが行ったり来たりしています。(若干名称は違いますが、1が文系も教わる内容で、2が理系でも生物を選択した人しか取らない内容、と思ってください。) 名称が電子伝達系→水素伝達系→電子伝達系、と行ったり来たりする例もあります。

これは個人的な思い込みかもしれませんが、高校で何を教えるべきか、また、どう教えるべきかといった教育の目的の研究や教材研究は、中学や小学における教材研究と比べてあまり力を入れられていないように感じます。(大学受験にどう合格するかという受験テクニックを除く)

教育内容について議論をするのであれば、生物や理科といった問題に限らず、『高校生には何を教えるべきか?』という事からまず積み立てていくべきだと思います。

研究を滞らせている、という議論をするのであれば、学部三年以降の専門教育、すなわち「研究者を育てるための教育の場」において何を教育すべきか、についての議論をするべきだと思います。